人類は、太古の昔から発酵とうまく付き合ってきた長い歴史があり、世界には様々な発酵食品があふれています。

私たちの住む日本も、世界で有数の発酵大国です。

日本人にとって身近な発酵食品。ですが、その発酵のメカニズムは少し複雑です。

近年、発酵食品が持つ力に注目が集まっていますが、その仕組みや美味しさの秘密について、よく知らないという人も多いのではないでしょうか。

以前ご紹介した「お漬物の乳酸菌のチカラ」から「発酵」に着目して、お話しします。

発酵とは?

発酵とは、微生物の働きによって物質が変化し、人間にとって有益に作用することです。食材についた微生物が自らの持つ酵素によって、でんぷん質やタンパク質を分解し、アミノ酸や糖分など様々な物質を新しく作り出します。

元の食材にはなかった味わいや豊かな香りを生み出し、栄養成分豊富な発酵食品へと変化します。前回の記事でもお話ししたように、微生物の活動の結果が、人体に有益ならば「発酵」といい、有害ならば「腐敗」と区別されます。

発酵の歴史

発酵は紀元前4,000年頃、エジプトでパンが食されていたとわかる壁画が残されています。古代メソポタミアでも、ワインやビールを作っていたとみられる遺跡が発見されています。

もっとも古い発酵食品は、現在確認されているもので、約8,000年前のワインだそうです。
当時のワインは、潰したブドウの搾り汁を樽の中などに入れ、自然に発酵させたものが始まりだといわれています。

チーズの歴史も古く、こちらはもともと偶然の産物だったそう。

旅の商人が羊の胃袋で作った水筒に、山羊の乳を入れて、らくだの背にのせ運んだところ、固まってしまい、食べてみると美味しかったことから広まったとアラビアの民話で語られています。

日本では「口かみ」という人の口の中で、お米や雑穀、いも類を噛んで吐き出し、唾液に含まれる酵素で分解されたブドウ糖や空気中の酵母を放置することによって、アルコールを発生させて作る発酵食品が縄文時代・弥生時代には作られていました。

微生物の存在が確認されるよりかなり昔から様々な方法で作られてきた発酵食品。日本の湿度の高い気候は、発酵にとても適し、特に湿度が高くなる梅雨時は、発酵に一番向いている季節です。そして、発酵させることで保存性も高くなることから、平安時代には酒・醤油・味噌・酢などの発酵食品が麹やカビを用いて作られるようになりました。

発酵と微生物の働き

発酵と深く関わる微生物には、「カビ」「酵母」「細菌」の3種類あります。

大きさを比較すると、カビ>酵母>細菌の順番になります。

<カビ>

カビは日本酒や味噌、チーズなどの発酵食品をつくるときに使われる菌です。

発酵の働きとして、酵素を作り出します。デンプンを糖に変えて甘味となるアミラーゼや、タンパク質をアミノ酸に変えるプロテアーゼ、脂肪を脂肪酸に変えるリパーゼが酵素の代表的なものとしてあげられます。

<酵母>

酵母はパンやワインやビール、日本酒に使われている菌です。

英語名では、イーストと呼ばれており、パンに使われているイースト菌も酵母の一種。酵母の働きとして、糖分を分解して、アルコールと二酸化炭素を生み出す働きがあります。

※日本酒の場合、麹菌によるカビの発酵と酵母によるアルコール発酵の2つを行うことで出来上がります。

<細菌>

細菌には、漬物やキムチ、ヨーグルトをつくる乳酸菌や納豆をつくる納豆菌、食酢をつくる酢酸菌が存在します。

乳酸菌の働きは、糖分をエサにして、乳酸を生み出します。

乳酸は酸性であるため、その場の環境を酸性に傾けることで、雑菌の繁殖を防ぎ、食品の保存に有効な働きをします。

漬物やキムチを漬け込んだ際に生じる発酵が乳酸菌発酵であり、乳酸菌が食材の糖をエサに乳酸を作り出しています。

乳酸菌は腸内環境を整えることで、私たちの健康維持に役立っています。

発酵食品の食べ合わせとは?

発酵食品はそのままでも、十分からだにとってさまざまなよい効果をもたらしてくれます。ですが、発酵食品を他の食材と上手に組み合わせることで、その効果をより高めることも可能です。

ここでは、発酵食品の効果を高める食べ合わせについて説明します。

食べ合わせを工夫して、発酵の効果をより高める食生活を心掛けたいですね。

まず、発酵食品は他の食材と組み合わせることで、マイナスな効果が発生してしまうことはほとんどありません。

よって、発酵食品はさまざまな食品との組み合わせで、良い効果が期待できます。悪い組み合わせがない分、いろいろな合わせ方を試してみましょう。

その中で、味ももちろん大切ですが、栄養素にもしっかりと目を向けることで、よりよい組み合わせが見つけやすくなります。

体内に取り込んだ菌は、約48時間ほどで排出されます。腸内環境を良くするためには、日頃から継続して発酵食品を取り入れていくことが大切です。

私たちがおすすめする効果的な食べ合せは・・・・

発酵×発酵!まさに最強!

<すぐき×納豆>

すぐきに含まれるラブレ菌と納豆の納豆菌は、腸内環境を整える最強コンビ。

納豆菌の代謝する物質が乳酸菌のエサとなって、腸内の乳酸菌が増えることで、腸内菌のバランスを効率的に整えることができます。

<ぬか漬×野菜類>

ぬか漬の醗酵の力、それは「米糠」にあります。

野菜類には、もともと乳酸菌や酵母菌等の微生物がついています。

「米糠」はその微生物たちのエサの宝庫でもあり、増殖を繰り返します。

増殖の中で、人間に良い影響を与える成分が生まれ、野菜そのものの栄養価も高められます。野菜の保存食としても最適なので、冷蔵庫で傷みかけた野菜などをぬか床に漬けても、1~2日で美味しく漬け上がります。食品ロスも防げるうえに、栄養価も上がるのは、とても得した気分になりますね!

さいごに(まとめ)

近年、発酵食品がもつ免疫力を高める、アレルギー症状を改善するなど、人の健康維持に優れた効果をもたらすことが、明らかになってきました。

コロナ禍によって、私たちの危機感は高まり、自分のからだと向き合う時間も多くなっています。食はからだをつくるための資本。まずは、菌やウイルスに強いからだづくりが重要です。

「発酵」の力で、免疫力を高めて、腸内環境を整え、新型コロナウイルスに打ち勝ちましょう!